アスペルガー症候群についての特徴(1×4タイプ)
前回、アスペルガー症候群について 矢印(1) × 強さ(4) = 4 のタイプであることを説明した。
それではこの1本の矢印はどういうところに向かうのだろうか?今回はその矢印の向かう先について説明したい。
平均的なタイプつまり4×1タイプの人間は食事や仕事、趣味や恋愛などにバランスよく興味がいくのは感覚でわかるであろう。
それでは1×4タイプのアスペルガー症候群ではどうなのであろうか?
食事のみ?
趣味のみ?
仕事のみ?
恋愛のみ?
いろいろな場合が考えられる。
難しいようであるが単純に考えると簡単である。
平均的なタイプと同じで居心地のいいところに矢印が向かうのである。
これは当然のことだろう。だれだって心地いいところに矢印が向かう。どのタイプでも同じなのだ。アスペルガーだから変わってるという事はない。
平均的なタイプの人達もどちらかというと矢印は居心地のいいほうに向かうであろう。恋愛が楽しいときは恋愛、仕事が楽しいときは仕事と。
それゆえアスペルガー症候群の向かう矢印の先は彼らが何に対して居心地のよさを感じるのであろうか?
恋愛であろうか?仕事であろうか?
もちろんその人それぞれではあるのだがひとつの傾向はある。
彼らは動かない太い矢印がどんっとあるので空気を読むのが苦手だったり変化に対してうまく適応できない。
それゆえ変化が少ないものに居心地のよさを覚えるのだ。
ここがポイントである。
変化が少ないものに居心地のよさを覚える
例えば乗り物ならばどうであろうか?
変化の少ない乗り物はといえば当然電車である。
電車は時間、路線がきっちりと決まっており揺れも少ない。よって極めて興味をもたれる。
それ以外にも論理学だったり電気回路だったり2進法ですっきり決まっているパソコンだったりといったものが興味の対象となる。
それとは反対に苦手と感じるものには極めて多様な対応をしなければならない恋愛や友達といった人間関係だったりする。
ここで困った事は人間関係というものは生きていく上で避けられないのである。
それゆえそこがうまくいかずにうつ状態になってしまうのである。
(ちなみになぜうつ状態になるかはまた別の記事で説明する)
矢印(1) × 強さ(4) = 4 タイプ
前回みたこの公式を少しいじってみようと思う。まず平均的な人間の特質は下記の通りであった。(なお矢印と強さは基本的にその個人の性格によって決まっていると考えてよい)
矢印(4) × 強さ(1) = 4
これを少し逆にしてみる。そうすると下のようになる。
矢印(1) × 強さ(4) = 4
これはどういう状態を意味しているのだろうか。式だとやはりわかりにくいので絵でかいてみる。
このようになる。つまり太い矢印(ヤリ)がひとつの事のみに集中するのだ。
1本の太い矢印が安定してひとつの物事を指す。この場合どのような事が起こるのだろうか?
当然の事ながら1つの事に異様にこだわるようになるのである。
これは趣味であれば1つの事にもの凄く詳しくなるというメリットがある。
それゆえ鉄道が好きだったり電気系に詳しかったりするのである。
これはすごく大きなメリットである。
色々な雑念が入ることがなくひとつの事にもの凄く詳しくなるというメリットがあるのだ。
これはすごく大きなメリットでありそうでない色々と興味がいく矢印の持ち主にはなかなかマネできない芸当なのである。
具体的にはこの 1×4タイプの人間にはマイクロソフトのビルゲイツや有名な論理学者であるヴィトゲンシュタイン、我らがさかなクンらがいる。
ここまで読むとなんとうらやましい性格なんだ!
自分も1×4タイプの人間になりたい!くそー!と思うかもしれない。
しかしこのタイプには欠点もある。
よくよく考えてみて欲しい。
矢印がバランスよく動かせないのでその場に合わせた対応が苦手であるといった特徴ももつのだ。
それゆえ趣味にだけ矢印がいくので他人との人間関係にも向かず恋愛にも向かずとなかなか日常生活に溶け込めないでいる場合が多い。
世の中の大半は4×1タイプの人間でありそのタイプの人間が作った世界に1×4タイプはなかなか入りこめないのだ。
そしてまわりから空気が読めないKY野郎とののしられるようになる。
しかし、もちろんこれは本人が悪いわけではないし、全く読めないわけでもない。
1本の太い矢印を自由に動かす事がなかなか出来ないため時間もかかるしその場にそぐう行動や発言がすぐにはできないのである。
それゆえ小さい頃から周りから疎外されているように思ってしまうため守りでひたすら丁寧に話すようになってしまう。
少し不自然な丁寧な話し方、同級生にも敬語といった感じである。
どうしたらいいかよくわからないからひたすら丁寧に話し続ければ減点されないという発想である。
それゆえ彼らは大きな長所があるにも関わらず周りから「オタクみたい、空気よめない」といってイジめられ鬱状態になっていく場合が多い。
そして近年このような1×4タイプの人間をアスペルガー症候群とラベル付けして呼んでいるのだ。
アスペルガー症候群、これまた最近よく聞く言葉である。
巷では鉄道にものすごく詳しかったり秋葉原に通ったりしている人たちの事をアスペルガーっぽいねなどと言ったりする事をよく耳にする。
もともとは1944年、オーストリアの小児科医ハンス・アスペルガーによって「自閉的精神病質」と報告されたが当時はあまり注目されていなかった。
その後、1981年、イギリスの医師ローナ・ウィングがアスペルガー症候群の発見を紹介し、1990年代になり世界中で徐々に知られるようになった概念である。
ただ、これは単に1×4タイプの人間にアスペルガーといった名前でラベル付けをしたに過ぎない。
精神科における運動方程式
それではいろいろとひとつずつの病気を見ていく前に基本的な考え方を学んでいく。
物理には運動方程式 ma=F があり基本的にこれによってほぼ全ての公式が導かれる。
精神科においての運動方程式をまず理解しなければならない。
それは下記の式のモデルで表される。
I×S =一定
I=Interest S=Strengthと表す。
この公式の意味は興味とその強さは保存されるというものだ。
わかりにくいので絵でみていこうと思う。
このヤリのような矢印が興味(I)で、このヤリの長さが強さ(S)を表している。
この場合の保存量は分かりやすく「4」と設定する。
つまりさっきのモデルは次のようにあらわされる。
矢印 × 強さ = 4
そしてその意味は次の通りである。
ひとは物事を考えるときに4本のヤリをもっていると考えて欲しい。
この4本のヤリの考え方は非常に大切である。
この4本のヤリは何を表しているかという何を考えているかである。
1本のヤリで「今日の夕飯の事を考え」
1本のヤリで「恋人の事を考え」
1本のヤリで「趣味の事を考え」
1本のヤリで「仕事の事を考え」
といことをバランスよく行っている。これが一般的な状態である。大体ひとは4つぐらいの事を自由に使い分け自由に切り替えながら色々なことを考えて生きている。
つまりひとのキャパシティーの中では8個も同時期に考えることは困難になるしもし忙しくてたくさんの事を考えなければいけない場合はひとつひとつの考える強さが小さくなる。つまりこの場合公式は
矢印(8) × 強さ(0.5) = 4
となる。なんとなく感覚でつかめただろうか?
これが人間の基本思考パターンのモデルである。
精神科の錬金術
さて、前回精神科で扱う領域を4つに分けた。
①器質疾患
②精神病
③気分障害
④神経症
である。
この4つの中で①から③までは比較的簡単である。
①は感染や怪我などわかりやすい理由があるし、②は統合失調症のみ考えればよく③はうつ病、躁うつ病を考えればよい。
これら3つには何の迷いもない。
問題は④である。
ここが最近の精神科問題が生じている根本であり、ここを理解する事が非常に困難なのである。
ここには発達障害やらパーソナリティー障害やら強迫性障害やらパニック障害やらいろいろなものがものが詰め込まれている。
そして同時にここにいる人たちはひと昔前ならば「病気ではない!」と言われていた人たちでもある。
病気でないと言われていた人達にどんどんと病名をつけていく。ここが精神医学の錬金術の源となっているのだ。
つまり昔ならば病気でなかった人達にどんどんどんどんと病名をつけていったところなのだ。
ここで錬金術と述べた理由はなぜかというと、病名をつける事で薬投与が可能となりそのために診察料、処方料ととる事が可能になるためそういうふうによぶ。
ここで勘違いして欲しくない事は病名をつける事が一概に悪い事ではないのである。
④の人たちはすごく苦しんでいる。
だからこのように病名をつけてその苦しさに市民権を与え少しでも快適に暮らしていけるようにする事はとても大切な事なのである。
問題はその本質が理解されていない事なのである。
それゆえに病名が散乱してしまい同じ症状に対してアスペルガー症候群であったり境界性パーソナリティー障害であったりと様々な病名がついてしまう事がある。
内科の病気ならばそれは極めてまれな事なのだ。
例えばインフルエンザと癌が同時に見つかった場合は偶然の一致として考えそれらがかぶる確率は単純に
インフルエンザの発症確率×癌の発症の確率
で計算できる。
しかし、精神科の場合は全く違う。アスペルガー症候群であったり境界性パーソナリティー障害であったりと同時に病名がつく場合は極めて多くそれらは同じ状態をみて言っているのである。
アスペルガー症候群×境界性パーソナリティー障害
ではなくてどちらかというと
アスペルガー症候群=境界性パーソナリティー障害
なのである。
なぜこのような事が起こるのであろうか。
それは精神医学が現在起こした錬金術によるものなのである。
好き勝手病名をつけたがために両者にかぶっている部分が生じてもそれを放置していたために起こってしまったのだ。
そしてその本質的な部分が一切理解されていないのでなんでかぶっているのかが理解されていないのである。
それゆえ診断名がかぶったしまった際にも、なぜかぶっているのかが理解されずそれに対してどうしてそのような診断名になったか病院やクリニックにおいてでも医師から十分な説明がされていない。
なぜならば医師ですらその多様されてしまった病名と本質を理解していないのである。
それゆえ病名をつけてそれに合わせた投薬をたくさん行い薬漬けになるといった事が起こる。
チェックリストをみて機械的に診断名をつけてしまっているのだ。
急激に起きた精神医学界の錬金術。
それによって専門家でもほぼ理解されていないその本質。
それゆえ困惑する患者。
しかし、患者は辛いと感じているため病院から抜け出す事ができない。
それに対して遷延する無意味な診察と処方。
この大部分はその病名の本質を理解することで解決できると思っている。
そしてその本質は知ってしまえばそんなに難しいことではなく専門家でなくても十分理解できるものなのである。
よってこのブログは専門家のみならず患者そのどちらに対しても有用であると考えている。
精神科の全体像
それではまず最初に精神科に来る人たちはどんなひとがいるのかの全体像を見てみようと思う。
ひとつひとつを見る前に全体像を見る事は何事においても非常に重要である。
地図を見るときも新宿区の地図だけをみていて次に博多の地図をみてとやっていても日本については理解できないだろう、まず最初に世界地図をみて日本地図をみてそれで新宿区の地図をみることで全体のバランスがわかるようになる。
それと同じなのだ。
そしてそれは特に精神科においては重要なのである。
なぜかというと精神科は非常に道に迷いやすいのだ。その理由として精神科の病気の概念とは実に曖昧なもので数年に一度診断基準が変わる珍しい科でもある。
地図で例えるならば数年に一度道やお店が変わるようなものである。新宿区のようなものなのだ。新宿区はお店がよく変わる。すぐにつぶれる。だから数年前の地図では役に立たない事が多い。
精神科は新宿区のお店がよく変わるように診断名が数年に一度変化したりするのである。それぐらい曖昧なものなのである。
具体的にはその精神科の診断基準は主にDSM-Ⅳというものを現在使っているがその前はⅢであり数年後にはDSM-Ⅴが出るのである。ⅣからⅤで診断基準や病名が大きく変わるものも少なくない。ドラクエより早い頻度で次回作が出るのである。
これは患者のみでなく専門家でさえ混乱してしまう。
特にアスペルガーなどの発達障害の概念は最近出てきたものであり、1990年ぐらいから徐々に知られてきている。
それ以外にも非定型精神病や非定型うつ病、自己愛性人格障害など様々な病気の概念が現在の精神科内ではみられる。
専門家でも多いなあと感じるぐらいなので、専門家じゃない人はよくわからないという事は当然なのである。
個々の病名を覚えていてもそれが変わってしまったりかぶってしまったりしていて全くもって理解できないのだ。
星座にいろんな人が好き勝手名前をつけているようなものである。
そこで今回は全体像についての概念を説明する。
以下の4つに分けて考えると非常にすっきりし、これで大体すべてが理解できるのである。これはクルト・シュナイダー(Kurt Schneider, 1887年1月7日 - 1967年10月27日)による概念でもあり現在でも非常に有用である。つまり精神科界の世界地図なのだ。汚い字で恐縮であるが見て欲しい。
この4つである。それではそれぞれについて説明していく。
①器質疾患
器質疾患とは脳に直接明らかな障害がある場合である。
例えば、脳が変性していくアルツハイマー病、HIV脳症、脳外傷などがある。
これは②~④で出現するような症状はすべてでてもいい。
②精神病
これは主に統合失調症や非定型精神病の事であり、妄想や幻聴など一般的なロジックでは了解不能な症状がある。
「了解不能」という言葉がキーワードである。
これは③から④の症状が含まれていてもよい。
③気分障害
これは鬱病や躁鬱病、非定型うつ病などが含まれる。気分の波が極めて大きく日常生活にも支障をきたすが了解不能ではない。
そこが②との違いである。
これは④が含まれてもよい。
④神経症
これは摂食障害や強迫性障害、人格障害が含まれる。③ほど気分の波が多くはない。
これは①から③までの症状が含まれてはいけない。
以上の4つに分ける事が精神科の分類を理解する第一歩である。
分からなくなったらまずこの4つの視点で考える事が大事なのである。
また、①から④に分けてある理由は、
①は②から④の症状を含んでもよく、
②は③から④の症状を含んでもよく、、
となっているからである。
つまりまず①を考えて次に②を考えてそして③を考えてどれでもなければ④である。と考えるのである。
これが精神科で扱うものの全てである。
まず困ったらここに立ち戻る事が重要である。そしてこの4つのどれかに当てはまるかわかるだけで大きな失敗はなくなる。
はじめに
どうもノスモです。
精神科医をほそぼそとやっています。
最近、精神科界では患者数が急激に増えている時期でもありそれとともに正しい知識が得にくくなっており色んな情報が錯綜する時代となっている。
具体的には厚生労働省の統計の患者数でいうと1996年には180万人であったものが2008年には280万人と10年ほどで急増している。
それにはいくつか理由があり、もちろん精神科にかかる事自体の敷居が下がったという事もあるとは思うのだが、まずはなんといっても病気が増えたという事につきると言える。
例えば最近はやりの仕事の時に落ち込んで週末は元気になる新型うつ病をはじめとするうつ病患者の急増。
みなさんの職場や学校にもうつ病で休んでいる人は増えているのではないだろうか。
さらには自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群など)やADHDなどの発達障害の概念の発生といった具合にである。
自閉症スペクトラムという概念はWingの研究によって1979年に生まれた非常に新しい考え方なのだ。
最近こども相談をやっていても「自分のこどもがアスペルガーなんではないでしょうか?」といった相談が相当多い。
しかし、その大部分が全く違うか特に心配する必要がないのだ。
それではなぜこのような事が起こるのであろうか?
その答えはこれに限る、
精神医学の知識が全く浸透していない
という事なのだ。
うつ病、アスペルガー、境界性パーソナリティー障害などなどこれらの病名だけが先行し様々なネットのチェックリストだけをみて自分や子供が当てはまるのではないかと心配する。
そして病院に駆け込み、医師も時間がなくじっくり診察できず薬の処方をちょいちょいと行う。そしてなぜか薬漬けになって自分のよくしたかった部分は何も変わっていない。
これが現在の精神科界の抱える大問題なのである。
しかし!!そうは言うものの・・・
中学、高校でも精神医学を学ぶ授業などもやっていないし本を読んでもよくわからない。さらにはあまりにも病名が増えているため専門家さえもなかなか理解しきれておらずあやふやに診断をつけてしまう場合が多い。
それゆえ、患者さんの中にはこういう経験はないだろうか?
「なんかこっちの病院では境界性パーソナリティー障害と言われたけど、別のところに言ったらうつ病と言われたり双極性障害と言われた。私ってなんなの?何が正しいの?」
そこでこのブログでは少しずつ精神科疾患の本質を説明していきたいと思う。
そこを理解すれば、「ああ、私はいろんな病名つけられたけどその理由はこうなのね」とわかるようになるし、病気の本質を理解すれば自分が苦しんでいる時に「あ、これは自分の気持ちの中でこういう事が起こっているんだ・・だから苦しいんだ」と客観的に理解ができるようになる。
客観的に理解できるようになると自分で考えの修正ができ対処できるようになる。そうすると症状が徐々に和らいでくるようになる。
つまり正しい病気の理解はどの薬よりも効果があることが少なくない。
それではこれまでほとんど知られていなかった精神科疾患の本質について少しずつみていこう。