医療現場でのADHD
それではADHDが実際の医療現場でどのように診断されているかみてみよう。下記のAからEにあてはまる場合にADHDと診断をつける。この診断基準はDSM−Ⅳ(赤字で記載)による。
それではみていこう。
A. (1)か(2)のどちらか
(1) 以下の不注意の症状のうち6こ以上が6ヶ月以上続いたことがあり、その程度は不適応的で、発達の水準に相応しないもの
⑴は注意欠陥に対してのものである。
不注意
a.学業、仕事、その他の活動において、綿密に注意することができない、または不注意な過ちをおかす
たくさんの矢印に注意がいってしまいひとつの事に集中できない事をいっている。これは一つの事に集中して他の事に注意のいかないアスペルガー症候群でみとめられるように見える。
b.課題または遊びの活動で注意を持続することが困難である
これもaと似ていると言えば似ているが注意の持続というところで違う。逆にアスペルガー症候群は一度集中してしまうと集中し続けることが多い。
c.直接話しかけられた時に聞いていないようにみえる
これはなぜわざわざここにあるのかわからないが話を聞いてないことは発見しやすいことが理由だろうか。これも一つの事に集中してしまうアスペルガー症候群でみとめられる。
d.指示に従えず、学業や職場での義務をやり遂げることができない(反抗的な行動または指示を理解できないためではなく)
まあこれもbと同じ。集中力が続かないためにやり遂げられない。
e.課題や活動を順序だてることが困難である
これは矢印がたくさんでてるためひとつの事を論理的に考えることが苦手となる。アスペルガー症候群は得意そうであるが実はひとつの事に集中しすぎて全体像がみえず順序だてられないようにみえることがある。
f.(学業や宿題のような)精神的努力の持続を要する課題に従事することを避ける、嫌う、またはいやいや行う
いろいろな事に興味をもちひとつの事に集中できないというaと同じことである。
g.課題や活動に必要な物(例えばおもちゃ、学校の宿題、鉛筆、道具など)を紛失する
これも色々な事に矢印が向いてしまうためそれ以前の事を忘れてしまう。これも一つの事に集中してしまうアスペルガー症候群でみとめられる。
h.外部からの刺激によって容易に注意をそらされる
これもたくさんの矢印に色々な刺激で反応してしまう。
i.毎日の日課を忘れてしまう
gと同じ事である。これも一つの事に集中してしまうアスペルガー症候群でみとめられる。
(2) 以下の多動性―衝動性の症状のうち6こ以上が少なくとも6ヶ月持続したことがあり、その程度は不適応で、発達水準に達しない
次に⑵は多動性と衝動性のものである。
多動性―衝動性
a.手足をそわそわと動かし、またはいすの上でもじもじする
色々と矢印があるため発想もたくさん出てきており落ち着いてじっとしていられない。
b.教室や、その他座っていることを要求される状況で席を離れる
aと基本的に同じである。
c.余計に走り回ったり高いところへ上がったりする(小児以外では落ち着かない感じの自覚のみに限られることもありうる)
これもaと同じである。
d.静かに遊んだり余暇活動に従事することができない
これはどちらかというと集中できないという⑴でも言える事である。
e.じっとしていなかったり、「エンジンで動かされるよう」に行動する
矢印がたくさんでありじっとしていたり動いていたりする。まあこれもaと同じ事である。
f.しゃべりすぎる
いろいろと矢印があり浮かんでくるためたくさん話してしまうのである。
g.質問が終わる前に出し抜けに答えてしまう
これも待っていられないというaと基本同じ。
h.順番を待つことが困難である
これも待っていられないというaと基本同じ。いろいろと発想がでてきてしまうため順番を待つことが困難になる。
i.会話やゲームにおいて他人の邪魔をしたり干渉する
これも基本はこれまでと同じなのであるが判断しやすいために挙げていると思われる。
B.多動性―衝動性または不注意の症状のいくつかが7歳未満に見られる
これは7歳未満とすることで先天的なもので怪我や薬物濫用によるものではないという事を強調している。頭部外傷や薬物濫用でもこのようにみえることがあるからである。
C.これらの症状による障害が複数の状況下(例えば学校と家庭)において見られる
まあ一時的なものでなくずっとですよっていう事。
D.社会、学業、職業等の機能において臨床的に著しい障害が存在するという明確な証拠が存在する
まあ病名をつけるのでそれなりに社会的に障害がある場合に限りますと言っている。
E.その症状は広汎性発達障害、統合失調症、その他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく、他の精神疾患(たとえば気分障害、不安障害または人格障害など)ではうまく説明できない。
もちろん他のものでは説明できないよって事。これは基本点にどの精神病性のものにも含まれている。
さて以上をみて矢印がたくさんというひとつの事でADHDの全てが説明できる事がわかったであろう。
このように複雑そうな病気でも解きほぐしてみると簡単に理解できる。
ここでもうひとつ疑問がうまれる。
なぜ注意欠陥と多動性の2つに分かれているのだろうか?
この事を説明している本などはほとんどみない。
しかし矢印をベースにこの診断基準をいま一緒にみると気づいたのではないだろうか。
そう、注意欠陥の場合は基本的に矢印が外に向いているのである。
何か興味の対象だったり外からの刺激だったりと。それゆえ診断基準でも物事に集中できないといった事や宿題を忘れてしまうなどと主に外に向いた事を言っている。
一方で多動性の場合は基本的に矢印が内からあふれて出ている感じである。
たくさん発想が出ていると考えるとわかりやすいだろう。
それゆえ話を聞き終わる前に答えてしまったり発想のまま行動してしまったりとなる。
この2つとも矢印が外か内かなだけで基本的にはたくさん矢印があるといった事で説明できるのである。